第9回 日本公衆衛生看護学会学術集会

第9回 日本公衆衛生看護学会学術集会

ご挨拶

学術集会会長

学術集会会長 急速に高齢化や少子化が進む中、家族機能の脆弱化やコミュニティのつながりの希薄化が加速し、地域では孤立が、家族内では密室化が進行しています。加えて経済状況の長期停滞を背景に、企業共同体の崩壊やワーキングプアといった労働の質の劣化が進み、社会的格差が広がっています。そして公衆衛生看護の現場は、このような格差から生じる健康課題と直面しています。とりわけ、子どもや高齢者、障がい者への虐待や、嗜癖問題、セルフネグレクト、自死など、人々が自らのあるいは家族の「健康と生命」を守ることが困難な状況がさまざまな場面でみられています。私たちが直面しているこれらの課題に共通する困難は、他者とのつながりへの信頼と期待の喪失です。「社会的包摂」とは、こうした孤立した人々のつながりを紡ぎなおし、一人ひとりを社会の構成員として認め合い、ともに暮らす地域社会をつくり出すことです。それは多様性を認めあいながら、誰も取り残されることなく、一人ひとりがもっている力を発揮しあえる、共生社会でもあります。

「公衆衛生看護の責任」は、健康格差と社会的排除にさらされている人々の困難と対峙し続ける姿勢と、全ての人々の健康の実現に向けて不平等の解消と社会的包摂を実現した共生社会をめざす努力であると考えます。しかし、その処方箋はたやすくはありません。公衆衛生政策を振り返ると、公共政策の名のもとに、コミュニティの分断や社会的な排除が引き起された歴史があります。ハンセン病、水俣病、薬害や公害問題などの歴史には、そうした社会構造的な要因が刻まれています。そしてこれらの要因は、過去の特殊な時代背景によるものではなく、現在の私たちが直面している課題においても、共通性をもっています。

また、2020年初頭から始まった新型コロナウイルス感染症の流行により、全国の公衆衛生従事者がその拡大予防のため、献身的に活動をされています。それらをとおして、当たり前の生活を守ってきた公衆衛生の機能を改めて地域の皆さんに伝える機会ともなっています。同時に、それらの感染症対策の影で、生活基盤の脆弱性や人々の孤立により、格差の拡大や課題の深刻化が進行している面も否めません。

社会的格差を内包しつつグローバリズムが進展する時代状況に対して、公衆衛生看護の責任に真摯に向き合い、有効なアプローチを生み出そうとする理論と実践の積み重ねは、公衆衛生看護学にとっての大きなチャレンジといえます。

本学術集会では、今だからこそ、歴史が語るメッセージから、格差と排除が進行する今の時代にある私たちが堅持すべき責任を照射し、未来を切り開く公衆衛生看護の実践を語り合いたいと願っています。そのためにも、歴史をもう一度見直し、私たちが見落としてはならない社会的視座を検証すること、そして取り残されようとしている人々を見出し支えるための活動実践や技術について、保健師の先達の実践や研究成果、他の学問領域の知見、さらにNPO/NGOなど市民社会の取り組みなど、多様な立場にある人々の経験と知見を共有し語り合うことは、その手掛かりになると考えます。

本来は、2021年1月9日(土)~10日(日)の2日間、東京の地で、公衆衛生看護に関心を寄せる全国の皆さんと対面して意見交換を深めたいと考えていました。しかし、まだまだ、新型コロナウイルス感染症の次の流行に備えるべき時であることから、本学術集会もオンラインで開催することといたしました。直接に対面できないことは、大変残念です。しかし、オンライン開催だからこそ、参加できる方々へと議論の輪を広げていける機会であるとも考えています。開催期間を延長し、ITに慣れない方にとっても、参加しやすい環境づくりを努力したいと思っております。

皆様のご参加を心からお待ちしています。

第9回日本公衆衛生看護学会学術集会

  • 学術集会会長
    大木 幸子(杏林大学 保健学部看護学科)
    学術集会副会長
    河西 あかね(東京都保健政策部/全国保健師長会)
  • 企画委員会、事務局一同

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